「ワインがよくわからない理由」の3つ目は、要素の多さ。
ワインのラベルには、次のような情報がぎっちりと書かれています。
こういった情報がオシャレな英語やフランス語で書かれていると「ものすごく仕事が出来る帰国子女」を目の前にしたような威圧感があるんですよね。なんだか、劣等感を持ってしまうというか・・・
さて、これらの情報を前に途方に暮れているみなさんに、朗報です。この5つの要素のなかで、ワインを選ぶときに、詳しくないうちは無視してもいい要素がいくつかあります。
どれだと思いますか?
正解は、①の「品種」以外、すべて。
「2000年のヴィンテージで・・・」「輸入元はどこで」「フランスのロワール地方で・・・」なんていっさい気にしなくても、おいしいワインに出会うことは出来るんです!
その理由をご説明しましょう。
まず、ヴィンテージ。これを追い求め始めると際限なくお金もかかってくるうえに、最近は年によってバラつきのない、安定したクオリティのワインをつくる技術が発達してきました。「この年はマズい」「この年はサイコー!」というワインが減ってきたのです。
また、造り手や輸入元をチェックするのは、やや上級者向けの楽しみ方。お気に入りの造り手や輸入元を持つとワイン選びも楽しくなりますが、おいしいワインへの手がかりにはなりづらいと言えます。
さらに、産地(ここでの産地とは国ではなく、「ボルドー」など国内における特定の地方を指します)。ちまたでは「産地で話せたほうが玄人っぽい」と思われがちですが、それは「〇〇地方の〇〇川沿いの〇〇さんの畑のブドウを使ったワイン、ある?」などとピンポイントで話せるほど詳しい場合のみ。そうでなければ、一口に「ボルドー」と言っても広大ですから、味に幅がありすぎて、参考にならないのです。
では、なぜブドウの品種こそがワイン選びの最大の軸になるのか。
その理由は、ワインの「つくり方」にあります。
皆さんはワインと日本酒のつくり方でもっとも大きな違いはなんだと思いますか?
それは、「放っておいてもできるかどうか」。
極論を言えば、収穫したブドウを発酵する環境で放っておけば、ワインになります。これはつまり、素材であるブドウの味がダイレクトにワインの味の差を生み出すということ。カベルネ・ソーヴィニヨンという品種でできたワインはそのままカベルネ・ソーヴィニヨンの味がするし、シラーという品種でできたワインはそのままシラーの味がするのです。
一方で、日本酒は、収穫した米を発酵する環境で放っておいても日本酒にはなりません。日本酒をつくるためには酵母を入れたり、混ぜたり、熱を加えたりと、味を調整するための工程がとても多いのです。
「じゃあ、日本酒は米の品種であまり味に差がつかないってこと?」
ご明察!日本酒は現状、ワインと違って「山田錦が好き!」と品種で「好き」を見つけるのはむずかしいのです。
ワインの味の大部分は品種で決まる。この大原則を理解するだけで、ワイン選びは一気にシンプルになります。